2015年7月18日土曜日

「時代を超えて」制作秘話&エピソード3~作曲&アレンジ編~

今回のブログ投稿は、「時代を超えて」制作秘話&エピソード3~作曲&アレンジ編~です。

 電子オルガンの世界では、演奏とともに初歩の学習段階から編曲や作曲(即興演奏を含む)の基礎的なことを学びます。
なぜかというと、電子オルガンに搭載されている多彩な音色や機能を活かし、そのオルガンの可能性を引き出すためには、演奏するモデル(機種)に合わせ編曲する必要があるからです。これらは、電子オルガンの祖先でもあるパイプオルガンも同じであり、演奏する楽器が設置される場所によって、またオルガンビルダーによって仕様が異なるためオルガン奏者は、学習段階で即興演奏や編曲法を学びます。逆に言えば、電子オルガンは、パイプオルガンの学習プログラムを引用し独自に発展させてきたという経緯があるのです。

 一口に編曲といってもオーケストラやビッグバンドの楽曲を雰囲気そのままに電子オルガン用に置き換えるいわゆるトランスクリプション、カバーをはじめ、全く違うジャンルの音楽にオリジナルにアレンジするものなど様々です。

僕が、電子オルガンを習っていた頃は、ちょうど音源が実際の楽器の音をマイクで録音し再生させるPCM音源(サンプリング音源)が出始めた頃でした。
それは、電子オルガンの発する音が実際の楽器を想起させるようなリアルな音がする時代になり始めたことを意味します。
電子オルガンの編曲や作曲の勉強の際には、実際のオーケストラやバンド編成を強く意識し、「実際にはトランペットでこんな低い音域を吹くことはできないからNG」だとか、「こんなにコロコロ楽器が代わる編成のアレンジは、相当な予算の音楽会でないと無理」といったような事を注意してアレンジしたり作曲していました。
そのようなアコースティック楽器の制約をそのまま電子オルガンの世界に持ち込むのはリアルな楽器音がする電子オルガンをよりリアルな演奏に近づけるためには自然な流れでしたが、一方で電子オルガンの独自の音楽とは何か?という問いも生まれてきました。
 電子オルガンの音というのは、オルガントーン以外ないため、音色を持って電子オルガンの音楽を定義付けることは無理です。(オルガントーンは、現在シンセサイザーをはじめ、他の電子楽器でも出すことができる。)
高校生の頃、この問題について深く考えたことがありました。この事を書き出すと相当長くなるので割愛しますが、やがて大学を卒業し論文を書き、「電子オルガンの音楽とは?」という問題を自分なりに結論や回答を出すことができました。

さて、ここからが本題ですが僕が作曲や編曲を、どのような頭の思考で行っているかということについて書きたいと思います。
まず良いメロディの断片が出来たとします。(このメロディの断片をクラシック音楽では主題もしくはモチーフとも言います。)
この良いメロディの定義とは、自分の主観や直感でしかないのですが「ああ!いい感じ!!」といったものや映像が浮かぶメロディです。少し演奏すると世界が広がりブルルと電気が走るような体感もあります。即興でこのメロディを演奏するとどんどん次へと繋がり展開していきます。


「時代を超えて」では、このメロディ断片の時点で「太陽」「時空」といったイメージがあったような気がします。
<太陽の音楽>→スペインのフラメンコ、アンデスのフォルクローレ
<時空>→中世ルネサンス時代の音楽
という感じでイメージが連鎖していき作曲&アレンジの方向性が決まり使用する音色や楽器も決まっていきました。

僕の場合、音色に独自の観念があります。
例えば
シンバル、鐘の音、金物系打楽器→邪を払う音、光
ハープ→天上の音、天使の竪琴
フルート、笛→鳥の声
ギター→哀愁、情熱、懐かしさ
太鼓→大地の音

といった感じです。つまり、一度、楽器音を抽象化しているのです。
なので曲を作曲したり編曲する時にイメージとして鳥が遠くで飛んでいる景色が浮かんだらフルートなど笛の音やフレーズをどこかに入れてみようという展開になっていきます。
前述のオーケストラやバンドではこうだからという制約は全くなく自由に音をセレクトするようにしています。
場合によっては、次々と音色が代わり実際の楽器編成では不可能な設定もあります。それは、イメージによって音色をセレクトした結果であり、電子楽器ならではのサウンドにも繋がると考えています。

いかがでしたでしょうか?よく色々な人から、「どういう思考回路になっているの?」と質問されることが多く今回取り上げてみました。
次回は、いよいよ最終回。「時代を超えて」制作秘話&エピソード4〜動画編〜です。
お楽しみに!!

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