2010年12月14日火曜日

第九演奏会を終えて


 
 本番前の弦打楽器やソリスト、合唱の方達とのリハーサルを客席で音響やバランス、ステージの状態を確認したいと思い、自分は演奏しているので客観的に確認できないためビデオカメラを設置する準備をしていると、指揮者の濱津先生やプロデューサーの河合先生がユーチューブにアップしてほしいと提案がありアップしてみました。ユーチューブは、制限時間があるので曲の一部を抜粋してアップしてあります。映像は、あくまで確認用として撮影したものです。
 さて、今回の第九演奏会は、弦打楽器はアコースティック楽器で金管木管楽器パートを電子オルガンで演奏しました。近年、電子オルガンの世界では、こうしたアコースティック楽器と電子オルガンによるアンサンブル形態をハイブリットオーケストラと名づけコンチェルト、オペラや声楽などの分野に進出しています。もちろん、電子オルガンのみのアンサンブルでオーケストラスコアを演奏する場合もあります。実は、アコースティック楽器と電子オルガンによるアンサンブルの試みは昔から行われており決して珍しいことではありません。こうした試みについて、必ず出てくる議論として「電子オルガンは、代用楽器なのか?」というものがあります。確かに、通常15人以上で演奏される管楽器パートを電子オルガン一台で演奏すれば人件費やステージの占有面積の節約でき、ういたコストで供給過多による競争激化するクラシック演奏分野に新たな雇用を創出したり、奏者のスケジュール調整が容易になるというビジネス上のメリットがあります。この点について僕は否定するつもりはありません。社会状況の変化に伴い第九演奏会も最盛期に比べ縮減傾向にあり、そういった点も大編成のオーケストラに比べると小回りのきくハイブリットオーケストラによる演奏の大きな魅力でもあるからです。
 しかしながら、ハイブリットオーケストラや電子オルガンによるオーケストラ演奏は今まで、こうした側面ばかりが強調され、ともすれば批判の対象となってきました。電子オルガンの演奏家の方達の中には、特にクラシックの分野でこうしたハイブリットオーケストラや電子オルガンによるオーケストラ演奏を仕事として専門にして活動されている方もみえます。学生時代より、こうした議論について考えてきましたが、一つ感じていることを述べたいたいと思っています。
 それは、「現代人の耳の感覚の変化」です。今まで特に伝統的なクラシック音楽は、音響の良いコンサートホールに足を運び演奏を聴くのが最良の鑑賞方法だという価値観があり、それは今でも音楽に携わる人、こと演奏に携わる人ならばゆるぎない価値観として持っている方も多いかと思います。しかし、音楽愛好家の方の中にはコンサートに行かず演奏者や指揮者違いの同じ曲のCDを何枚も聴くという層もいます。録音、再生技術が日進月歩している現在、手軽に家庭でサラウンドの音響を楽しむ人も少なくありません。テレビや映画館、インターネットなど様々なメディアから音楽が流れています。また、それらは全てスピーカーから再生されている音です。ともすれば、アリーナでのフュギュアスケート演技で大音響で流れていた素敵なクラシック音楽をホールで実際の演奏を聴いたら何か迫力にかけて拍子抜けしてしまったとか、CDの名盤の演奏を期待していたのに今一だったというような感想をもたれてしまう方もみえるのです。(誤解のないよう追記しますが、僕自身はアコースティック楽器の生演奏は、大好きです!吹奏楽部でトランペットやホルンも吹いていました。)つまり、伝統的なクラシック音楽といえども享受方法が多様化しており好むと好まざると10年前と比べても我々の耳の感覚は、変化し続けているのです。
 また、社会環境も自動車、電車、飛行機など音を発生させるものが身の回りに溢れています。いくらローソクの光が癒されるからといって、生活に必要な光全てをローソクにするということはできません。また、地上デジタル放送が普及しはじめている現在、アナログ映像を見ると、やはり荒さを感じてしまう人も少なくありません。クラシック音楽演奏分野では、まだまだ電子楽器に否定的な感情を持つ方もいらっしゃいます。しかし、社会がこれだけ変化している以上、伝統あるクラシック音楽といえど変化しないというのはありえないことであり、クラシック音楽の演奏に携わる人達も従来の既成概念にとらわれ固執すれば自分で自分の首を締めるという結果になってしまいかねないのです。
 電子楽器や音響技術は、そのような社会の変化とクラシック音楽演奏分野との隔たりを緩和させることができるのです。また僕自身は、こうした議論の結論は最終的に聴衆が決めるべきことだと考えています。今回の第九演奏会は、電子オルガンで低迷するクラシック音楽分野において少しでもクラシック音楽の魅力を伝え普及のお手伝いができればという思いで懸命に取り組みました。
そしてアコースティックか否かが判断基準でない真の音楽世界の実現を願っています。

最後に演奏を支えて下さった多くのスタッフの皆様へ感謝申し上げます。

追伸 オーケストラの現状について分かりやすいページがありましたので下記にリンクしておきました。http://www.sym.jp/news/050315_1.html

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